第9章 私たちのはちゃめちゃな職場体験
大きな音が響き、気づけば私の前にはヒーロー殺しが立っていた。
「ビンゴだ」
そして、飯田の前には息を荒らげた緑谷がいた。彼は飯田が現場にいないと知り、急いで彼の姿を探したようだ。…ふむ、彼の武器はその分析力だな。報告することででき、私はホクホクだ。…まだ体は動かない、囚われの身だが。キリッとした顔の緑谷と目が合う。途端に崩れる顔。
「うえっ!? 犬猫山さん!? なんで君がここに!?!?」
「緑谷くん!! また捕まってるなんて、そんな顔しないでぇー!!」
「これじゃ、ゆっくり話もできないな」
舌打ちをしながら、私をちらりと見るヒーロー殺し。先程から、私に話しとは何だというのだろう。緑谷たちがいる前で、下手なことを話されるのはまずいことこの上ない。
「私は話なんてないって言ってんでしょ!! もういいから、早く個性をとーいーてぇぇぇ!!!!!!」
「それは無理だ」
そして、私を担ぐヒーロー殺し。……またこの格好か…。私は荷物じゃないっての!!
「犬猫山さんを返せ!!」
「俺はこの卵に用がある。ぶつかり合えば当然……弱いものが淘汰されるわけだが…どうする?」
ゾクッとするものが体を貫く。久々の感覚。今から人を殺す…そういう殺気。緑谷たちはこの殺気に少し気圧されていたようだが…私は少し心地良さを感じた。