第9章 私たちのはちゃめちゃな職場体験
「よぉ、ヒーローの卵」
私は今、不意打ちをくらい地面に付していた。ゴホッと打ち付けられた体から息が漏れ、私はキッとそちらを睨む。そこで私を襲った相手は、全身を包帯に包み込まれた不気味な男だった。
「……ヒーロー殺し…」
私が思わず呟くと、男は嬉しそうに微笑んだ。
「頭も働くようだ。それとも、俺の特徴を事前に聞いていたか。そうだ、俺はヒーロー殺し『ステイン』。ヒーローを粛清する者だ」
まさか、ヒーロー殺し本人から襲われると思っていなかった。私はまだ動く気配のない体を確認し、口を開いた。
「そのヒーロー殺しが、ひよっこの私に一体なんの用?」
私の問いかけにヒヒッと笑うヒーロー殺し。
「少しばかり、聞きたいことがあってなぁ。手荒なことをさせてもらった。こいつに見覚えは?」
そして、ヒーロー殺しが後ろから引っ張ってきたのは、先程のヒーローだった。なんだというのか…。相手の心内が読めず、私は警戒しながら頷く。
「こいつはヒーローとしてあるまじき行動を行った」
「なんだ体が動かねぇ……死ねクソ野郎…」
私は嫌な予感がし、体を動かそうとした。しかし、体はピクリとも動かない。…個性か!!
「ヒーロー殺し!! 私の問いの答えは!!」
私が叫ぶが、多分遅い。ヒーロー殺しは聞く耳を持たない。そのヒーローを殺すかして、次は…私だ。その証拠に、ヒーロー殺しは私を無視し、呆れた顔をそのヒーローに向けていた。
「ヒーローを名乗るなら、死に際の台詞は選べ」
大きく振りかぶったその剣が、ヒーローを殺すまで…あと少し。