第9章 私たちのはちゃめちゃな職場体験
「子供っ!?」
隣のヒーローも声に反応し、キョロキョロと見渡す。………いた。車の後ろだ。脳無の存在に気づいていないらしく、すぐ近くを歩いている。
「どうされますか?」
私は彼に問う。あの子供を助けるには、必然的に脳無と戦わなければならない。ヒーローは躊躇し、そして私を見た。
「ど…どうするって……俺は……」
そして、目を伏せ、その子供からも私からも目をそらすヒーロー。私は思わず笑ってしまった。脳無は子供の存在に気づき、大きく拳を振る所だった。
「これだから、この町にヒーロー殺しが現れるんですよ、先輩」
私は思いっきり、脳無を蹴り飛ばした。羽の生えた脳無は思った通り軽く、吹っ飛んでいく。ポカンと私を見るヒーローを無視し、私は子供を抱き上げ微笑んだ。
「君っ!! こっちで大きな音がしたが……これはっ!?」
遅いご登場で、新たにヒーローたち数名が現れ、私を驚いた顔で見る。私はその後ろから現れたこの子の母親と見られる人に、子供を手渡した。
「これは…君が?」
そう問われ、私は笑った。
「まさか。私はただの補助で、全て先輩ヒーローの指示です」
何か言いたげの先輩ヒーローをちらりと見ると、ビクッと体をふるわせる。
「ですよね!! 流石、先輩ヒーロー。見事な采配でした」
私の声にそのヒーローを絶賛する声が上がる。私はくるっと後ろを向き、その場を後にした。
「まったく…この程度でヒーローなどと…呆れてしまう」
その言葉を誰かが聞いてるなんて…知りもしないで。