第9章 私たちのはちゃめちゃな職場体験
まぁ、そんなこんなで特に何も無く、ヴィランと戦うこともなく、私の3日目の職場体験は終わりを迎えそうだった。
「……まぁ、そんな簡単にいくわけないか」
初日から続く穏やかな夜を迎えるのかと思った矢先のことだった。すぐ近くで、立ちのぼる黒い煙が上がり、鼻の奥まで焼けた匂いが立ち込める。
「事件だ!! ヒーローとは何か教えてやる!! 付いてこい!!」
走り出すエンデヴァーの後ろを付いていく。しかし…
「…脳無…?」
以前のものより大分形態が変化しているが、間違いない。脳無だ。それがエンデヴァーと私たちを取り囲む。私は舌打ちをした。…脳無を出すなんて聞いてない!!
「……っ!! 気をつけ……夜蝶!?」
「え」
てっきり轟に呼ばれたのだろうと思っていたが、実際に私の名を焦ったように呼ぶのはエンデヴァーだった。地味に名前を呼ばれるのは初めてだな…。そうぼんやりと思いながら、私は黒い闇に落ちていったのだった。