第9章 私たちのはちゃめちゃな職場体験
保須に拠点を置き、2日が経った。本日も過重労働だった。隣では轟が平然と任務をこなしているが、私も彼も7時から現場におり、殆ど休みを取っていない。
「………エンデヴァーさん。そ……そろそろお昼休憩を……」
轟より先に運転手がギブアップをし、ようやくお昼休憩が取られた。休憩先は……蕎麦屋。轟とエンデヴァーは躊躇なくそこへと入っていくからだ。
「……似たもの親子」
私がぼそっと呟くと、それを聞いていた運転手が苦笑いを返した。
「すみませんね。うち、お昼は蕎麦屋と決まっていまして……」
私は彼に曖昧な笑みを返す。あの上司について行くのは大変だろう。当然のように轟の前にエンデヴァーが座り、私は少し離れた所に座る。運転手がさも当然とばかりに私の前に座ると、轟がこっちを見た。視線が合うと、何故こっちに座らないのだと言っているようだった。…いや、私はエンデヴァーと座る勇気はない。
「いやぁ、やっとご飯ですね!!」
ニコニコと屈強な体格とは不似合いな笑顔を見せる運転手。…この人、なんでこの事務所に入ったんだろう…。
店員さんに注文をし、私が水を飲んでいると、不意に視線を感じ、私がそちらを見ると途端に逸らされる。
「すみませんね。みんな、あなたのことが少し気になるみたいで……エンデヴァーさんと一緒に住んでいらっしゃるとお聞きして…」
言葉を選ぶように言う運転手。私は気にしていませんと笑う。ありもしない噂が飛び交うのは、ヒーローも一般人も何も変わらないようだ。
「それに、あなたがいらっしゃると、エンデヴァーさんもいつもの倍増して張り切られるようですから」