第9章 私たちのはちゃめちゃな職場体験
そして、気づけば私たちは外にいた。目の前では、大きなトラックが横転しており、その下敷きとなっていたのは…私たちが先程まで乗っていた車だった。男は真っ赤な炎に身を包み、私と轟、そして運転手を抱えていた。
「あれ!? 俺車の中にいたはず…って!? エンデヴァーさん!?!?」
…状況を見るに、トラックの事故に巻き込まれそうになったところを助けに入ったのか…。冷静に分析する中、轟はじっとエンデヴァーの顔を見ていた。その額には汗が浮かんでいる。…まぁ、当たり前か。あのおしゃべりな運転手を含め、轟も私も…全く反応できなかったのだから。しかも、エンデヴァーがいつどんなタイミングで現れたのかも、自分たちがいつ車から出たのかもよく分からない。ようするに、これがプロヒーロー…しかもNo.2と私たちの差というわけだ。
「……助けていただき、ありがとうございました」
エンデヴァーが私たちを降ろすと、足元におそらくトラックの運転手と思われる男性が気を失って倒れているのに気付く。怪我もないようだ。この男は、私たちだけでなくトラックの運転手も助けたのか…。あの一瞬で。
「流石ヒーローだ!! この大事故でけが人はひとりもいない!!!!」
ようやく周りが事態に気づき、騒ぎ始める。
「車の中でコスチュームに着替えろ。ここの掃除をする」
そういうと、エンデヴァーは周りの歓声など目もくれず、スタスタとあるきだすのだった。