第9章 私たちのはちゃめちゃな職場体験
「お疲れ様です!! いやぁ、坊ちゃんも大きくなられて!! 体育祭、見ていましたよ!! 流石、エンデヴァーさんのご子息で!!!!」
目的地について、2人でぼんやりと待っていると、大きな車が私たちの前に止まり、中から出てきたのは大柄な男の人。顔に似合わず、その人は少し涙ぐみながら轟の手をブンブンと上下に振った。そして、その顔で私の方もばっと見る。
「そして、あなたも体育祭で、見事な活躍をされていましたね!! エンデヴァーさんがやけに食い入るようにしてあなたのことを見ていたと思ったら中々の実力で……」
見かけによらず、おしゃべりの人のようだ。ポカンっとしている私たちに、しきりに喋ったあと、ようやく車に乗り込み出発する。車を発車させてもなお、前の男の人は口を閉じる気配がない。私のポケットの中にある携帯が震えるのが分かった。
「………」
私は画面をちらりと見ると、窓の外へと目を移した。今のは黒霧さんからで、内容はヒーロー殺しとの接触完了というもの。…ヒーロー殺しを仲間に率いて、どうしようというのか。本当に、先生の考えることはよく分からない。いくら、死柄木を育てるためだとはいえ……あの手のタイプは扱いづらいだろうに。今後のことを考えると、億劫なことこの上ない。
…いっそのこと…抜けてしまおうか…。そう考えたこともある。あそこの扉もひとつではない。別の場所に移っても……
「夜蝶」
先生の声が脳裏に響き、ゾクッとしたものが背中を伝った。そして、ゆっくりと息を吐く。
「大丈夫か?」
私の様子に何か感じ取ったらしい。私は微笑み、少し酔ったと伝える。
「…そこで、エンデヴァーさんが待って……え?どうしました坊ちゃん…車を止めろ? いえ、もう少しで着きますから………」
轟の過保護っぷりに私が苦笑いをした時だった。急に辺りがくらくなったのた。