第9章 私たちのはちゃめちゃな職場体験
みんなと駅でお別れし、私は轟と2人同じ方向へ歩いた。
「重くねぇか?」
絶賛、私に構いたがり中の轟に私は大丈夫だとやんわりと断る。もう手馴れたものだ。しかし、まぁ…私はちらりと彼の顔を見た。彼は目が合うと、こてんと首を傾げた。…随分とまぁ、骨抜きにされちゃって。
あの体育祭以来、轟はほかのクラスメートとコミュニケーションをとるようになった。これもそれも、緑谷出久の影響だろう。それ以前の轟は、父親しか見えていなかったから。
「どうした? やっぱり荷物は俺が持とうか?」
まっ、彼は彼なりに思うことがあるのだろう。それに、彼の選択は正しい。自分の個性の上を行く存在。それが自分の父親であるエンデヴァーなのだから。
「…大丈夫!! 職場体験、頑張ろうね!!」
私がそう笑いかけると、轟もまたニコリと笑うのだった。