第8章 職場体験の前に起こったゴタゴタ
次の日。私はげんなりとした顔で、学校に登校した。その原因は…もちろんこいつ。
「本当に荷物を持たなくていいのか?」
そう、当たり前のように私の隣を歩く、轟焦凍だ。朝、目を覚ますと、轟が目の前にいたのは本当に心臓が止まるかと思った。…なんなんだ…嫌がらせか…
「…別に重いもの入ってないから大丈夫。ねぇ、急にどうしたの?」
私は本当に今まで見た事ないような顔を連発する轟にそう尋ねた。轟は、心配そうに私の顔をのぞき込む。
「どうしたって、兄貴なんだから心配するのは当たり前じゃねぇか。いつもより顔色悪いし」
………なるほど。彼の中で、私は妹という格付けなのか。私は思わずため息をついた。こりゃ、面倒なことになった。轟にこんな甲斐性があったなんて。末っ子だから、妹という言葉に弱いのか?
「…夜蝶」
「え、急に何名前で呼ん…」
私がそう言い終わる前に、強い力で引き寄せられた。私の頬に轟の固い胸元が当たる。
「車が来てるぞ」
私たちの横をスピードを出した車が通り過ぎた。……いや、わざわざこんなことしなくても、言葉にしてくれたら避けるって。
「………あ…ありがとう?」
「礼はいい。…兄貴だからな」
だから、なんだそれ!?