第8章 職場体験の前に起こったゴタゴタ
ヒヤッとしたものが、心臓を凍らせたような感じがした。轟の言うことが正しければ、エンデヴァーは私の存在を前から知っていたということになる。しかも、それは私がヴィラン側へ行く直前のことかもしれない。私は唾を飲み込み、
「………覚えてない…」
と、引きつった顔で答えた。声が震えないようにするのが精一杯だった。
「…………そうか。まぁ、昔のことだし仕方ねぇか。あの後、すぐにお前はどこかに引き取られたらしいしな」
私の様子に、鈍い轟は気づいていないようだ。私は、彼が何故今この話をしたのか気になった。……生徒相手に感づかれるようなヘマはしていないはずだが…
「…ごめんね。でも、なんでもっと早く言ってくれなかったの?」
なるべく明るい口調で彼にそう聞く。すると、彼は答えた。その答えと彼の様子に私は目を白黒させたのだ。
「…確信が持てなかったんだ。何せ、妹がいると聞かされて、随分経っちまったからな」
そこには、自身の髪の半分のように、顔を赤らめた、今まで見たことの無い表情をした轟がいたからだった。