第7章 指名と名前決め
「……脳無…か…」
教室までの道。他のクラスは授業が始まっている中、私は自分のクラスへと戻りながら考えていた。
対オールマイト用に改造された、複数の個性持ち。それが脳無。オールマイトを完全に攻略できるような個性を複数持たせ、完全無敵に近いものに作り上げた。…まぁ…個性をいくつも持ったせいで、自我も消えてしまったが…。それも彼らが力を求めた結果なので、別に同情はしていない。……ただ……
「やっぱり…お花いっぱいで見送ってあげてほしかったなぁ…」
今ヒーロー側に囚われている脳無。彼とは、1度だけ顔を合わせたことがあった。ヴィラン連合軍と関わりもないただのチンピラ。それを黒霧さんが言い様に言って連れてきたようだった。
「力を手に入れて、俺の事を馬鹿にした連中を見返してやる!!」
彼の目には野心があり、オールマイトも超えるような強さを欲しがっていた。それは他の失敗した被検体たちと同じような姿だった。
「……彼も同じでしょうか?」
黒霧さんがため息を吐くのをちらりと見て、私も興味なさそうにため息をついた。先生や黒霧さん達とは違い、私は脳無なんかに興味がなかった。失敗作を何体も見てきたからだ。人間が力を求めた成れの果て…それが脳無。あんなおぞましいものを、よく先生は作ろうという気になったものだ。
「……力を手に入れて、馬鹿にされた人たちを見返して…そしてどうするの?」
と、脳無の最終実験…つまりは自我を失う前に、私は1度だけ彼に尋ねた。ただの興味本位だった。すると、彼はボロボロの体で、それでも満面の笑みで答えた。
「…母サンに……会イたい…」
と。そして、彼は見事に力を手に入れたのだ。その代償に、母親に会いたいという気持ちさえも消えてしまったのだが…。