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私の敵はヒーロー

第7章 指名と名前決め


~誰かside~

「失礼しました」

そう言って、部屋から出ていく犬猫山の姿が消えると、塚内さんがふぅっとため息をひとつはいた。

「本当にすまなかったね相澤くん。君にこんなこと頼んでしまって」

そして、拘束された男を一瞥する塚内さん。俺はポリポリと頭をかいた。男が俺の足元で身じろぎする。

「これで、内部調査の必要性を上に伝えることができるよ。恥ずかしい話…脳無を利用としようとするものはこの男だけじゃない。…彼女に接触する者も出てくるだろう…」

彼女は僕らの中でも有名だからねと、困った顔をする塚内さん。…この人には色々お世話になってきた。オールマイトの正体を知る数少ない人物でもあり、長年ヒーローと警察の橋渡しを担ってくれている信頼できる人だ。しかし…

「分かってる!もうこればかりにするさ。私だって、頼みたくなったと言っただろ? 上の命令なんだ。…頼むから、そんなに睨まないでくれないかい?」

慌てたように手を振る塚内さんに、俺はひとつ息を吐く。そんな俺の様子と同調するように、塚内さんもため息を吐いた。

「……あんな境遇でも人は育つものなんだと、あの子を見て思ったよ。USJの事件の時、彼女は自らを呈してクラスメートを助けに行ったそうじゃないか」

「……」

独り言のように呟く塚内さんの言葉を背に、俺は教室へと戻るために扉に手をかけた。そんな俺に、塚内さんはあぁ…と思い出したように口を開いた。

「そういえば、この件に対して、やけに彼が気にしていたよ。全て俺に任せておけ…と言っていたが…」

脳裏に、あの暑苦しい男が浮かび、俺は無意識に顔が引き攣るのがわかった。

「………ええ。今朝連絡がありました。では、俺はこれで失礼します」
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