第7章 指名と名前決め
「……学校では止めてくださいとお願いしたはずですが…」
私は周りに人の気配がないことを確認し、電話を取った。ヒーロー名を決めている時からずっと鳴りっぱなしで、正直うんざりだった。
「ええ。しかし、こちらも急を要するものですから。犬猫山夜蝶」
という割には、ゆったりな口調の黒霧さん。この人のこういう場合、あまり重要な案件だった試しがない。私はため息をついた。
「…休み時間も5分を切っていますので、簡潔にお願いします」
「では、そうしましょう。まずは、報告から。ヒーロー殺しと接触に成功しました。近々、話し合いの場を設けるつもりです」
「……そうですか」
ヒーロー殺し、ステイン。ふと、飯田の顔が頭を過ぎった。私はため息をひとつつき、壁に体を預ける。人の気配がチラホラ出てきた。早く話を切り上げなければ。黒霧さんは案外、ヴィランのくせに話が長い節がある。
「そして、どちらかといえば、こちらが重要ですね。これは、とあるルートから小耳に挟んだ話なのですが…」
馬鹿丁寧な黒霧さんの口調にイライラしてきたときだった。私は彼の次の言葉に吹き出してしまう。
「脳無となった被験者の身元が判明されました。その他にも色々判明したところもあるでしょう。恐らく、近々君に声がかかりますから、上手くやって下さい。脳無が死柄木弔以外に反応を見せたのは、君の個性だけですから」
言いたいことだけ伝え、電話はプツリと消えた。私はしばらく手の中の携帯を見て、そして教室へと戻ろうと足を早める。そして、その途中…
「…犬猫山。すまん、少しいいか?」
相澤先生に声をかけられ、私は笑顔で頷きながら、心の中で舌打ちをするのだった。