第6章 雄英体育祭
「………そうですか」
仕事内容は、主にヒーロー殺しを利用し、緑谷出久を拉致するというものだった。おそらく、それで平和の象徴を炙り出すのだろう。
「……ええ。おそらく大丈夫でしょう。彼は空を飛ぶ手段がありませんし……ええ…しかし、彼の力を攻略したわけではないので、その点に関しては注意しなければなりませんが…」
「ふむ。では、その辺りは脳無の能力を見て、作戦を練りましょう。……試合も終わりそうですね。では、君も頑張ってくださいね」
「……はい。ありがとうございます…」
電話を切り、試合の様子を見れば、2人が互いにぶつかり合っているところだった。轟の半身から炎が上がっている。
「緑谷出久…。ちょっと君のことがわかった気がする」
対戦相手にわざわざ塩を送ったり、自分の弱さを認めたりと…まるで物語の主人公のようであり…彼の後ろ姿はたまにオールマイトと被るところがある。
「君は…オールマイトを越えたいんだね。彼を超えた…ヒーローになりたいんだ…」
脳裏に蘇るのは、幼い頃の記憶。もう二度と思い出すことの無いと思っていた記憶。
「僕、かっこいいヒーローになる!!」
そんなことを言うもじゃもじゃ頭の無個性の子供。あぁ……私はあの無邪気な少年を殺さなくてはならないのか…
「だけど、私は……私の夢のために……君を乗り越えるよ。緑谷出久」
そう…私はヴィラン。ヒーローを心の底から毛嫌いする悪の側。試合終了の合図で、緑谷が負けたことを知った私は、木から降り会場へとむかった。