第6章 雄英体育祭
私は1人、ステージを見ていた。轟と、緑谷。
好成績を残す二人の試合は、会場の熱気を最高潮にさせるのに十分な材料だった。
「……これで…やっと個性が分かる」
私が目を見張るのと同時に、プレゼントマイクのゴングが聞こえ、試合が始まった。やはり、予想通り轟が先制とばかりの氷結が緑谷を襲う。
「…やはり…彼の個性は強力だな」
今まで見てきた中で、最強と呼べる部類かもしれない。しかし、その彼が緑谷の個性を警戒しているのはその氷の規模で伝わってくる。緑谷の超パワーは未知だ。うかつに近づけば、負けるのは轟の方になる…。
「…ここで個性を使わないと…負けるよ緑谷」
バキバキと派手な音を立てて緑谷に牙を剥く氷を、デコピンのポーズで構えた緑谷が迎撃する。自損覚悟の打ち消し…か。あの力を、緑谷はどう見ても使いこなせていない。後天的な個性が出現したと彼は言うが……
「にしては、彼の家族にそんなパワーを持つ個性はいませんが」
電話の奥から、黒霧さんがそう言い、私はええ…と頷いた。ようやく電話に出たと私はため息をついたが、目はステージから目を離さない。
「…見てます?」
「ええ。死柄木も夢中ですよ」
その話はいらない。私は軽く流し、二度相殺された轟が体勢を整えているのを見た。
「結構、長そうですね。この試合…」
「ええ。では、その間に仕事の話でもしましょうか」