第6章 雄英体育祭
……しっかし……。私はいつまでも離してくれない心操くんの背をもう一度軽く叩いた。
「ねぇ、心操くん。いつまで泣いてんの」
「……泣いてねぇ」
「いや、バレる嘘つかないでよ。見る?私の肩、君の涙でビッチョビチョだよ?」
「………涙だけとは限らないじゃないのか?」
「げっ!?まじか…」
私はバタバタと暴れるが、ガッチリホールドされてるので、中々抜け出せない。そんなことを繰り返していると……
「うおっ!? 犬猫山か!?」
次の試合が始まり、瀬呂くんが顔を出した。瀬呂くんは抱き合っている私たちを見て、呆れた顔を見せる。
「…彼氏…当分いらないんじゃなかったのか?」
「いや、彼氏じゃないし。慰めてただけだ…っていった!?」
私をぺいっと押しのけて、スタスタと行ってしまう心操くん。あいつ…!! 何も壁の方に押しのけなくても……!!
「……あれがお前の慰め方か…。俺も頼んだらしてくれんのか?」
既に諦めモードの瀬呂くん。そう言えば…彼の相手は轟だったか。私は思いっきり彼の背を叩いた。
「瀬呂くんの個性なら、1発で場外だ! 轟くんにあほ面をかませれるのは、君しかいない!!いっけー!!」
「なんだよ…その励まし方…。だけど…そうだよな。試合負けに諦めるのも…よくないよな!」
そして、意気込んで行った瀬呂。私が通路から退出する前に、どんまーいという会場の声が聞こえたのだった。