第6章 雄英体育祭
「あれ?轟くん! こんな林の中でどうかしたの?」
「…それはこっちの台詞だ」
轟は私の方へやって来て、私の手にある携帯電話を見た。
「……隠れて電話するような相手か?」
私と彼は同じクラスだが、あまり話したことは無い。それはクラス全員に言える。彼は人を寄せつけず、常に一人でいたからだ。だが、彼はあまりにも察しが良すぎる。怪しまれる前に退散するとしよう。
「そりゃあ…ね。聞かれたくない話もありますよ。轟くんにもあるでしょ?」
「……」
私はニコッと笑った。彼はタブーとなった個性婚で生まれた子供。エンデヴァーがオールマイトを超えるために、作り出したのだ。彼の身辺調査はバッチリだ。
「お前のことを…あいつが気にしてた。お前、親父と何か関係があるのか?」
その場を去ろうとしていた足が止まる。あいつとは…エンデヴァーのことか。私は口を開いた。
「さぁ? なんのことか私にはさっぱりだよ。それより、轟くんが気にしないといけないのは、本選のことじゃないの? 緑谷くんに勝つんでしょ?」
「…そうだな。わりぃ、忘れてくれ」
「いえいえ。じゃあ、お互い頑張ろうね」
そして、今度こそ立ち去ろうとした時、ヒヤッと冷気が辺りに立ち込めた。木々に霜が降りる。
「……勝つぞ。お前にも」
エンデヴァー関連により、私にも宣戦布告とは、父親を憎む轟らしいといえばらしいな。
「勝てば? ただじゃやられないけど」
私は振り返って、彼を見た。クールそうな彼からは想像出来ないほど、感情がコントロール出来ていない。父親に何か言われたか?
「力を出し惜しみして…果たして勝てるのかな。フレイムヒーロー、エンデヴァーの息子くん」
「……その呼び方は…あまり好きじゃねぇ」
さらにあたりの気温が下がり、私の体の体温も下がっていくのが分かる。でも……それはあっちも同じのようだ。私はフッと笑った。
「自分を1番気にしてるのは自分だよ。もっと自由に生きたらいいのに」
ふふっと笑い、私はくるりと踵を返し、今度こそその場から離れるのだった。