第6章 雄英体育祭
「………なに…」
「てめぇ……無様な負けを晒したら…分かってんだろうなぁ?」
今度は、隠さず大きな舌打ちをする。やはり、私はこいつのことが生理的に嫌いだ。それこそ、ヒーローとかヴィランとか関係なく。
「…彼に無様に負けた上に、貴重な検体を置いてとっとと逃げたあんたに言われたくない」
バキッと音がし、私は思わずその耳障りな音に電話機を耳から離す。
「死柄木弔。落ち着いてください」
黒霧さんがため息をこぼす。ため息が似合う人だと思った。
「…次会ったら…絶対殺してやる」
「やれるもんならやってみろ。ファザコン野郎」
このやり取りも久々だ。私がヴィラン側の扉を叩いた時、やけに私に突っかかってきたこいつをあしらううちに、いつの間にか先生の目に留まったのだ。…運がいいのか…それとも悪いのか。
「ククククク!」
死柄木が気持ち悪く笑い、私は顔を引き攣らせる。ふと鳥が一声鳴いた。
「…人が来たにゃ」
足元で遊んでいたクロシロがそう言う。分かっていると私は電話機を耳から離した。
「てめぇを殺すのはオレだ!他の奴には殺られんじゃねぇ………」
「……うん!ありがとう!本選も頑張るね! じゃあね!!!」
死柄木が物騒なことを言っていたが、私は早口でそう言うと、電話を切った。
「…犬猫山か…」
木の影から現れたのは、何やら浮かない顔の轟焦凍だった。