第6章 雄英体育祭
順にくじを引き、トーナメント表が決まっていく。1番戦いたかった緑谷は、左ブロック。準決勝まで行かないと戦うことはできない…か。本当、ことごとく上手くいかない。
「私は…右ブロック…最初の相手は三奈ちゃんか…」
1-A 芦戸三奈。個性は酸。手足や角など、体中から溶解液を噴出することが可能。…なるほど。真正面からいけば負けは確実だな。
「確か…溶解液の粘度も調整出来てたっけ…50m走や騎馬戦もこれを利用してたし…」
「なになに?私の話?」
三奈ちゃんが、ひょこっと私の横から覗き込んでくる。私はニコッと笑った。
「そっ。三奈ちゃん、強い個性持ってるなって」
「えー? そうでもないよ? 調整が効かない時があるし、それに服が溶けちゃう時もあるんだ!だから、普段はあまり強いの出さないようにしてる!」
確かに、彼女は結構な量を一気に噴出できる他、本気の溶解度だとビルの壁すら容易に溶かせるらしい。その気になればエグい攻撃ができる恐ろしい個性を持ち。
「なんだか、峰田くんあたりが喜びそうな個性だよね。それにしても三奈ちゃん。……今から戦う相手に、情報を与えちゃっていいのかなぁ?」
「あっ!?!?」
個性把握テストの順位は9位と、運動神経は1-A女子の中で一番高く、クラスでも上位に入る。個性だけでなく、彼女自身も高い身体能力を誇る。
しかし、その反面座学に関してはお世辞にも賢いとは言えず、クラス順位は下から二番目。最下位の上鳴と並んで1-Aのアホの子代表となっている。つまり、彼女は知能戦が苦手。私はくすくすと笑った。
「不公平だから、私も教えてあげるね。私の個性……実は……」
「うん!! なになに??」
三奈ちゃんの耳にこっそり口を持っていく。
「実は………動物以外には使えないの」
「えっ!?…………それのどこが実は…なの???」
きょとんとする三奈ちゃんに私は吹き出した。やっぱり気づいてないか。あれだけ、私が一次予選で大きく披露したというのに。
「あとは、自分で考えて。三奈ちゃんだけに教えた私の秘密なんだから!」
そう言って、私は頭をひねる三奈ちゃんに背を向ける。
「楽しく遊ぶぞ!レクリエーション!!」
レクリエーションの開始が促され、それぞれが参加か本選への準備に移行する。…私も準備をしないと…ね。