第6章 雄英体育祭
足が異様に軽い。リカバリーガールの腕は確かなようだった。本選が始まるまであと数十分。皆はもう会場にいるだろうか…。
「………おい」
誰かに呼ばれた気がし、振り返った私が見たのは揺れる炎。そこにいた人物に私は目を見開く。
「………フレイムヒーロー…エンデヴァーさん…」
私はぺこりとお辞儀をした。思っていたよりも大きい体が、私の方へ歩いて来る。
「…………犬猫山夜蝶だな」
近づいてくるごとに、体に威圧がかかる。これが…No.2…轟の父親…。私は体が震えるのが分かった。
「…………はい…」
なんだ…何か怪しい行動をしてしまったのか…。威圧が増し、冷や汗が止まらない。じっと私を見るエンデヴァー。
「………私に……何か用ですか」
私はキッと彼を見た。彼はしばらく何も言わなかったが、髭で隠れた口元が少し揺れた気がした。
「……容姿は似てないと思ったが…性格は母親似だな」
「え?」
エンデヴァーはそれだけ言うと、私の横を通り過ぎて行く。な…なに?なんで母のことを……。去っていくその後ろ姿に私は叫んだ。
「は、母を……なんで知って……!?」
目の前の体が止まり、低い声が廊下に響き渡る。
「お前の母親は…俺の実の妹だ」
「………は?」
色々なことが頭に浮かぶ。母に…母に親戚はいなかった!父にもだ。だから、私はあの事件のあと孤児院に入れられて………
「知りたければ、俺にスカウトさせるくらいの実力を見せろ」
話は以上だというように、エンデヴァーは去っていった。私は拳を握りしめ、その消えた後ろ姿を困惑した目で見つめていた。