第19章 囲う*カラ松
大人しく後ろをついていくと、広い1室に辿り着く
カ「この部屋を好きに使っていいぞ・・と言っても俺と共同だがな」
ネクタイを緩め、ジャケットを脱ぎながら言う
カ「必要な物があれば揃えるから、遠慮なく言ってくれ。あとは・・・」
「あ、あの」
矢継ぎ早に投げかけられる言葉を遮る
「何で私を・・・?」
考えあぐねているような表情をしたあと、視線を逸らして
カ「普通の女子高生だったのに、いきなり慰み者にするのはどうかと思ってな・・・囲うではないが、なんとか安心させたくてな」
意外。悪い人じゃないのかな
カ「とにかくこれからよろしく頼む。部屋は出るなよ、ブラザー達に何をされるか分からんからな」
「はぁ」
ニカッと笑いながら話す彼は、ヤクザやマフィアとは無縁そうなほど屈託ない笑顔だ
カ「改めて、カラ松だ」
「一之瀬、です」
差し出された手におずおずと手を重ねる
優しくキュッと握られ、思いがけない温もりに胸が小さくなった
そんな風に始まった奇妙な共同生活も早2ヶ月
人間の慣れとは恐ろしいものだ
本当に必要なものはすぐ揃えられ、退屈しないようにと本なんかも買ってくれた
元々本を読むのが好きだった私は、時間も忘れて読み耽っていた
今日も飽きずに読書に励む
日付が変わろうとしていることにも気付かずに
カ「なんだ、まだ起きていたのか」
「あ、カラ松さん。お帰りなさい」
扉が開いたのも気付かなかった
カ「もう日付が変わるぞ」
「本当だ。寝なくちゃ」
読んでいた本を閉じ、ベッドへと潜り込む
「電気消して大丈夫ですか?」
カ「あぁ、俺もシャワー浴びたらもう寝る」
これも初めは抵抗したが、カラ松さんはそういう人じゃないと分かったから慣れてきてはいる
とは言え、同じベッドで寝るのはどうなんだろう・・・
そんなことを考えながら次第に意識を手離した