第19章 囲う*カラ松
side.一之瀬
ごく普通の毎日
それはある日突然、跡形もなく崩れ去った
高校に入って間もなく、帰宅すると家の中で両親と見知らぬ男が対峙していた
「あ、あの」
戸惑いつつも声をかけると、見知らぬ男は首だけで振り向きニヤリと笑った
?「君にはウチにきてもらうから」
その言葉が合図だったように突如後ろから口と体を押さえられ、引きずるように外へと連れ出される
そのまま黒塗りの車に押し込まれ、車は発進してしまった・・・
半ば強制的に連れてこられたのは、立派な建物
引っ張られて中に入ると、これまた豪華な家具家財
程なくして、ある1室に通される
1人の男が座り、その両側に5人の男が並んでいた
?「ようこそ、我がファミリーへ」
座っている赤いネクタイの男が、見下げた目をしながら言う
お「俺はおそ松。一応ここのボスよん・・・あとの奴は追々色で覚えてくれればいいや」
さて、と膝に肘を置き、その手に顎を乗せてニヤリと笑う
先程からこの笑いが、薄気味悪くて仕方ない
お「君は父親の借金のカタにウチに来ることになったんだ」
借金?そんなの聞いたことない
お「知らなかった?ま、仕方ないね~、事実だから」
立ちすくみ、自分の裾をギュッと握る
どうしたら、どうなるんだ、軽くパニックになる
お「で、君に危ないことさせてもねぇ・・・給仕か、夜の相手でもしてもらおっかなぁ」
薄気味悪い笑みがさらに下卑たものに変わる
それを見た瞬間、我慢していた涙が溢れた
?「はぁ」
不意に誰かが溜息をつく
男達の方を見ると、青いネクタイの人がおそ松の座る椅子の背もたれに手をかけ
?「俺が彼女を買う。専属にさせてもらうぞ」
お「あり、どったのカラ松。珍しいねぇ・・・ま、俺は金が回収できればそれでいいから構わないよ?」
カ「なら交渉成立だな。明日本部の方に振り込むぞ」
私を置き去りに話が進んでいく
お「りょーかい。んじゃ、この話は終わり、解散!」
パンッと手を打っておそ松が立ち上がる
周りにいた男達も各々どこかへ行ってしまう
訳が分からずに呆然としていると、先程カラ松と呼ばれた人が目の前に来た
カ「行くぞ、ついて来い」
射抜くような視線と、有無を言わせぬ口調に恐怖を感じながら従うしかなかった