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松の間

第4章 羨ましい*チョロ松


あれから2週間
あの日帰ってから散々泣いた。気持ちを切り換えるために
でも、どこかスッキリしないままでいた

例の団体さんはくるものの、その中に松野さんの姿はない
当たり前。そう自分に言い聞かせる


日も沈みかけ、お客さんも居なくなったので片付けを始める
入り口外のシャッターを閉めるために扉を開けた

?「あの、ちょっといいかな」

するはずのない声がする
おずおずと声の方を見る。いつもの困り眉をさらに下げている松野さんがいた

チ「えと、ごめんね。こないだのことで」

「どうぞ。外ではなんですし」


テーブルに向かい合って座る
顔を見るのが何となく怖くて俯いた

チ「えっと、こないだはごめんね。実は僕あんまり覚えてなくて…」

「え…?」

予想外だ。あんなにお兄さんに怒りを向けてたのに

チ「怒りと憎しみと絶望でぐちゃぐちゃになってたみたいで」

それであんな抑揚の無い言葉と表情を返されたのかな
だからと言って期待が出来る訳じゃない

チ「でもね、ここ何日か」

そこで松野さんが言葉を切る
続きが気になって顔を上げると、真剣な目がこちらを見ていた

チ「君の泣きそうな顔だけがハッキリ頭に浮かぶんだ。僕のせいなんだろうけど、どうしてなのか分からなくて」

これは言葉にしていいのだろうか、自惚れて良いのだろうか
けれど、喉から出るのは小さな嗚咽だった

チ「え、あ、ごめん!やっぱり僕酷いことした?!」

「ちが…違うんです。私、松野さんが好きなんです」

チ「へ…え、ぼ、僕?!好きいぃぃ!!?」

ボンッと音が聞こえそうな程の勢いで赤くなる松野さん
展開についていけないのか、目が泳ぎソワソワしだす

「フフッ」

そんな松野さんが可笑しくて、可愛くて

チ「あ、わ、笑わないでよ…違うか。笑ってる方がいいよ、うん」

今度は私が赤面する番だった

チ「僕の中で毅然と店に立つ顔と、泣きそうな顔しかないから」

ズルい。そんな風に言われたらもう止められない

「にゃーちゃんが羨ましいんです、松野さんにとても想われていて。今は彼女が真ん中でもいいです。少しずつでも良いですから、私もそこに近づきたいです」

松野さんに伝わるように真っ直ぐ彼を見据えて言う
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