第1章 Episode0 #すべてのはじまり
『あ……そういえば、名前……』
完全に名乗るのをど忘れしていた。
反省………。
『私は麻倉ミネです』
私は椅子に座り直し、ぴしっと居住いを整える。
「俺は梶裕貴です」
『梶裕貴……』
やっぱり、聞いたことない。
マネージャー、って画面に表示されていたことが気になってしまい、どうしても顔をまじまじと見てしまう。
「あの……?」
梶さんが少し戸惑ったように、苦笑する。
『あの……、すみませんが、お仕事は……?』
「俺の、ですか?」
早く知りたくて、目で彼を急かしてしまう。
「声優、です」
『せい、ゆ、う………?』
せいゆう……?
せいゆう、ってなに?
私の困惑ぶりを見た梶さんが、少し笑ってから説明してくれた。
「声優、というのはアニメや映画などの吹き替えをする職のことです。簡単に言えば、声の仕事、ですかね」
『声優………。声の仕事………』
だめだ、わからない。
なにせ、テレビをあまり見ないものだから、ただでさえ俳優さんとかも全く知らないのに、アニメなんて見たことない。
でも、これでひとつ知ることが出来た。
声優、というお仕事があって、彼はその声優をしている梶裕貴さん。
また、調べてみよう。