第1章 Episode0 #すべてのはじまり
『それじゃあ、そろそろ帰りますね』
もう外は真っ暗。
時計はもう夜中の10時を指していた。
梶さんの顔色もまだ少し悪い気がする。よく寝てもらうには、私は邪魔だ。
だから、帰ろうとしたのに。
「え……?帰っちゃうんですか……?」
なんて、少し落ち込んだように言われ、少し気持ちが傾いた。
『私は他人ですし、ひとりの方が梶さんも落ち着きませんか?』
明日の朝、また行けばいい。
seasonの皆には遅れる、と謝れば。
「ひとりは………寂しい……」
本当に寂しそうで憂いを帯びた瞳に私は、帰る、とは言えなくなっていた。多分、今、彼は熱を出しているからそう思ってしまうのだろう。
それに、無性に寂しくなることなんて誰にでもある。
『……分かりました。今日は泊まることにしますね。少し、看護師さんに許可をもらいに行ってきます』
そういえば、面会時間をとっくに過ぎてしまっているけど………。まあ、いっか。
看護師さんに許可をもらってから部屋に戻ると、梶さんは既に寝ていた。
私はというと、疲れたはずなのに眠気がどこかへ行ってしまい、暇だから、椅子に座り、窓の外を見ていた。