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君の音、僕の音。〜梶裕貴〜

第5章 Episode4 #波乱


「君は逃げてる。家族と向き合うこと、自分と向き合うこと………今と向き合うことから逃げてる。君がしようとしていることはまた逃げるってことなんだよ」

そんなはずがない。
だって私のせいで家族が………!だから私はこの罪を背負ってひとりで!

「ねえ聞いて。君が今しないといけないことはなに?凜ちゃんをひとりにすること?違うよね?君は悪くないんだ。誰も悪くない。それでも君の気が済まないというのなら、一生をかけて償えばいい。でもそれは凜ちゃんをひとりにして罪を背負い続けることじゃない。それは逃げているだけなんだ」

だったら私は一体なにをすればいいの?
逃げてばかりのこんな私なんかに他の生き方なんてあるのだろうか。確かにひとりで生きていく、と言って逃げていた。だけど、それ以外に何も見つからない。

「幸せになろう?君が幸せになって、凜ちゃんをもっともっと幸せにしてあげるんだ」

いい案でしょ?と彼が私を抱く腕を解き、私の顔を覗いた。

「幸せになる………?私がひとりで辛い思いをして生きるのではなくて?」

「そう。幸せになるんだ。それが一番の償いの方法だよ」

梶くんの言葉に凜が涙を流しながら大きく頷いた。

「お姉様、私はお姉様とずっと一緒にいたいの。最初で最後の私のわがまま、叶えてくれる?」

こんなことでいいの?
私が幸せになることで、罪を償えるの?

「見て、凜ちゃんの顔を。こんなに幸せそうな顔、君にしか出来ないよ」

私にしか聞こえない声でそう囁いた梶くんの顔の慈愛に満ちた顔。凜の幸せに満ちた顔。それだけで、私が幸せになることを許された気がした。私は自分に甘いのかもしれない。

でも、これでいいのだ、と今なら胸を張って言える気がする。

「凜、そんなわがままなんて小さすぎるよ。もっとずーっといっぱい言っていいんだから。9年分のわがまま、全部聞いたげる」
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