第4章 Episode3 #過去
【梶裕貴side】
「ミネっ!?」
急に彼女が倒れてしまった。
なんとか受け止めたが、彼女の顔を見ると、真っ青でたくさんの汗が浮かんでいた。
「梅原………!なんでそんな責めるみたいに────」
俺は、梅ちゃんを責められなかった。
梅ちゃんがあまりにも辛く顔を歪ませていたから。梅ちゃんも傷ついているということが分かったから。
「ごめん………ごめんな………」
何度も何度も謝る梅ちゃんを俺は責められない。どれだけ、彼にとっても覚悟のいることだっただろう。
「梅ちゃん………」
今は、そっとしておこう。
店内をぐるりと見回して、俺はひとつ気になった。なぜか、店内には誰もいないのだ。まだ開店時間のはずなのに。それに、seasonのスタッフの姿さえ見つからない。
「え………」
厨房を覗いて、俺は言葉を失った。
seasonのスタッフの美玲ちゃん、柚葉ちゃん、海斗くんがしゃがみ込んで泣いていたから。
「梶さん………!私達……店長がそんな……記憶を失ってること………全然知らなくて……っ」
いつもどこか強気な柚葉ちゃんが涙を流しながら、悔しそうに唇を噛んだ。
「何も………してあげられなかった……!」
俺はすべてを悟った。
きっと、この子達が店のプレートをcloseに変えたのだろう。
ミネ、君は皆に愛されてる。
何も、怖がる必要なんてないんだ。