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君の音、僕の音。〜梶裕貴〜

第4章 Episode3 #過去


「いいんだな?」

『はい、お願いします』

梅原さんの念を押す言葉に、私は身が引き締まった。それだけ、覚悟のいる話だということだから。

私は自然と梶くんと袖をぎゅっと握った。それを、梅原さんが一瞬見てから、少し悲しそうに笑った気がした。

「まず、俺のことから言うな?俺は梅原裕一郎。歳はお前と一緒。声優をしていて、梶さんと共演もしたことがある。だから、俺らは顔見知りってわけ」

ずっと疑問に思っていたことが明らかになり、少しすっきりした。そこまでは淡々と話していた梅原さんも、すぐに言葉を詰まらせた。

「そんで、お前のこと、なんだけど………」

梅原さんが大きく息を吸いこんだ。

「お前の記憶喪失は多分………お前の母さんの死が絡んでる。………いや、お前の母さんの死が原因だ」





【梅原裕一郎side】

お前が望むなら、俺は何でもする。
例え、お前が傷つこうとも、それがお前の望んだことなら…………。

なあ、いいよな………?





突然、梅原さんが私の肩を掴んだ。

『梅原さん……っ!?何を────』

「お前はもう知っているはずだ!でも、辛いからって知らないふりをし続けている!違うか!?よく思い出せ!考えろ!あの日、お前とお前の母さんとの間に何があった!!なんでお前の母さんは死んだ!!」

考えたくなくても、そう言われては考えてしまう。

いやだ………いやだいやだいやだ!!

『分からない!!私には分からない!!!』

分からない分からない分からない………




分かりたくない…………!



「逃げるな!そう言ってまた逃げるのか!?お前が辛いだけだろ!本当は知ってるよな!?何があった!言ってみろ!」

苦しい………!
何も無い………何も無い何も………


耳を劈くようなブレーキの音。
何かがぶつかり合う音。
赤く染まったアスファルト。

『あ…………、ぁ……っ!ああああああああああ!!!!』


そこでぶつりと意識が途絶えた。
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