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君の音、僕の音。〜梶裕貴〜

第4章 Episode3 #過去


梶くんは何も言わず、ただ優しく微笑みかけてくれた。

「大丈夫。君なら、受け入れられるよ」

違う。
梶くんが思っているほどに私は強くなんかない。すぐに泣いてしまうし、後ろを見てしまう。私は貴方が思うような人ではないの……。

『…………梶くんは………梶くんは、私の過去を知っても、私を受け入れてくれる?私が私ではなくなっても………?』

記憶を取り戻したら、私の中には、記憶がない間の代理として出来た人格の私と、今までの記憶を背負った〈私〉がいることになる。つまり、私というひとつの体の中に二人の人格が出来るということ。多分、私はそれを受け入れられない。体が受け付けないと思う。

だから…………


片方の人格が消えてしまうことになるだろう。

『もしかしたら、私はすごく極悪人かもしれないし、すごく性格の悪い人間かもしれない。過去にはとんでもない過ちを犯しているかもしれない。それでも………好きでいてくれますか………?』

今まで梶くんに黙っていたのだから、梶くんには選択する権利がある。私は、ここで梶くんが受け入れられない、と言えばちゃんと身を引く義務がある。

でも、出来れば…………




お願いだから、頷いて………!


「俺が君のことを受け入れない訳が無いじゃないか。俺は、例え君がどんな人であろうとも受け入れるよ。受け入れられる。だって、俺が好きになったのはミネそのものなんだから」

『っ………!』

何かが喉に詰まって上手く話せない。
嬉しい。すごく、嬉しい。

彼は、私を好きでいてくれる。なら、私は過去を知ろう。例え、どれだけ辛い過去でも受け入れてみせよう。

『梅原さん、お願いします』

やっと、覚悟が決まった。
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