第4章 Episode3 #過去
『うわあぁああぁあ!?』
私は思わず梶くんを突き飛ばした。
『え………、今………えぇええ!?』
今………、今!!
梶くんを………す、すすす、好き………とか!!
ひとりでパニックを起こしている私を彼は不思議そうに見つめた。
『うわぁあああああ!!!』
「え、ちょっと!?」
後ろから聞こえた梶くんの声を無視して、私は全速力で走って店を出た。だって………、そんなの………!
私は知らないっ!
*
*
*
【梶裕貴side】
「え、ちょっと!?」
俺の声は届かず、彼女は全速力で走って店を出ていってしまった。seasonのスタッフはみんな帰ってしまったから、俺はひとりぽつんと残されてしまった。
抱きついてしまったのが悪かった……?
でも、最初は俺に身を委ねて安心しきった感じで泣いていた。俺としては、安心されても複雑な感じなんだけど。まあ、それはいいとして。
だったら、なぜ彼女は急に………?
そういえば、急に叫び出した時の顔、赤かったような………。いや、これは俺の自惚れ?そうなって欲しい、という願望?
いや、でもこれしか答えが見つからない。
俺は黙って頭を撫でていただけで、特別変な事はしていない。むしろ、するわけない。彼女に嫌われたくないし。それに、彼女は俺を知ろうとしてくれているんだから。
だから、つまり…………
彼女は俺を意識した……?