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君の音、僕の音。〜梶裕貴〜

第4章 Episode3 #過去


『ごめんね、急に泣いたりして』

「店長が泣くから美玲ちゃんも泣いちゃったぁ」

え?と驚きながら私の肩に手を置いてくれている美玲ちゃんの方を見ると、彼女は無言で俯きながら泣いていた。

『み、美玲ちゃん!?』

「てんちょぉぉ………!大好きですぅっ!」

そう言って、私に力強く抱きついてきた。私の肩で泣きじゃくっている美玲ちゃんの頭を優しく撫でる。

『うん、私も大好きだよ』

「店長っ!」

と大声で叫びながら、海斗くんも柚葉ちゃんも私に抱きついてきた。みんな、すぐにでも泣いてしまいそうな顔をしている。

『うん………。ありがとう、みんな』





『よし、みんな!そろそろ帰ろっか!』

いつまでもこの状態でいるのはさすがに暑い。

「店長はまだ残るんすよね!?だったら俺も────もがっ!」

「それじゃあ、私達は帰りまーす!ね、美玲ちゃん!」

柚葉ちゃんが海斗くんの口を手で塞ぎ、慌てたような早口でそう言った。

「う、うん!」

小さい声で、「空気読め!」という声が聞こえた気がするけど………まあ、気にしない!

『それじゃあ、みんなお疲れ様』

「はーい」

賑やかに出ていくみんなの背中を見送ってから、私は梶くんに視線を移した。

『ずっとそこで見守ってくれていてありがとう』

彼は何かをするわけでもなく、ただずっと黙って見ててくれていたのだ。それが、彼の優しさ。

「本当は俺も抱きつきたかったけど」

そう冗談めかして言う彼に、私はくすりと笑いかけた。

「…………」

彼は私に何も聞かないで、そっと抱きしめてくれた。そして、頭を優しく撫でてくれる。

彼は、どうして私が泣いてしまったのかを聞かない。もちろん、私だって聞いて欲しい訳じゃない。彼のその優しさが嬉しかったのだ。私はまた流れてくる涙を止めようとは思わなかった。

















好きだなぁ………。
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