第3章 Episode2 #悪夢
「じー………」
何か視線を感じる……。
私は梶くんに頭を撫でられたまま、視線を横にずらす。そこには、両手で顔を覆いながらちらちらと私達を見ている海斗くんがいた。
『海斗くん?どうしたの?』
「おふたりは付き合ってるんですか?」
と、まさかの本日2回目。
『付き合ってな────』
「そう見える!?」
私の否定よりも大きな声で梶くんが言ったせいで、私の言葉は遮られる。海斗くんは親指を立てて、グッとする。
「ばっちり!」
いえーい、とハイタッチをしている。そして、そこに、柚葉ちゃんも混ざる。
「やっぱり見えるよねー!お似合いだよ!」
また、いえーい。
私は呆れ半分、恥ずかしさ半分で、厨房に戻った。それに気付いた梶くんが私を追いかけてくる。
「ミネ?どうかした?」
『いえ、別に……』
少し恥ずかしかったから、とか言えない。私がそういうことを言うのを想像しただけで………
「気分悪そうだけど……大丈夫?もしかして、俺と付き合ってるって勘違いされるの嫌?」
『嫌、という訳では…………』
それに、気分が悪いのは自分がデレてるところを想像したからで………。とは、言えるわけがない。
私はくるりと彼に背を向け、パンを作る準備をする。何かしていないと落ち着かない。
ああ、ダメだ。はやくこの雰囲気を変えないと。
「俺は────」
『あ、そうだ!今日はメロンパンを作ろうかな!え、えっと………あ、カレーパン余ったので食べます?店に出す分よりも多めに作っちゃったんだ!確か、こっちに────』
「ねえ、聞いて。俺はミネが好きなんだ」
不意に後ろから抱きしめられた。
力強いけど、私を優しく包んでくれている。そんな感じがした。一瞬で顔が熱くなる。
『や、やめてください………』
少し声が掠れた。
声を出したくても、喉からは空気しか漏れなくて声にならない。
恥ずかしい?嬉しい?
違う。
そんなこと……思ってない!
怖い。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い!
『やめてっ!!』
私は後ろにいた梶くんを突き飛ばした。