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君の音、僕の音。〜梶裕貴〜

第3章 Episode2 #悪夢


『私は………』

私自身が

『大嫌い……』

だって、素性の知れない私なんて……

『気持ち悪い………大嫌い!!』

私は気づけば厨房から逃げる様にして出ていた。それからのことは覚えていない。我に返った時にはすでに、全く知らない場所に来ていたから。

日曜日。
両親と両手を繋ぎながら無邪気に笑う子供。仲良さげに歩くカップル。

そんな中に、独りの私。

あーあ。
嫌いだなあ。

私は私が大嫌いだ。





【───side】

「season………」

ここか、あいつのいるトコは。
俺は手に持ったチラシと店を交互に見る。

「迎えに来たぞ、ミネ」

ぼそっと呟いてみる。
もちろん、誰にも聞こえないように。
昔一緒にした、お姫様ごっこの延長線上みたいだ。なんて、ガキすぎるか。

扉に手をかけようとすると、いきなりそれが勢いよく開いた。その拍子に、扉に取り付けられた鈴が少し乱暴に音を立てた。

「うおっ」

中から出てきた人にぶりつかりそうになるが、ギリギリで避ける。

「あ………」

すれ違いざま、肩までのショートカットの髪が風に吹かれ、顔が少し見えた。一瞬しか見えなかったが、あいつで間違いない。

思わず、頬が緩んだ。

「みーつけた♪」
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