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君の音、僕の音。〜梶裕貴〜

第3章 Episode2 #悪夢


「最近、よくいらっしゃいますよね」

厨房から出てきた柚葉ちゃんが梶さんに声を掛ける。………じゃなくて、梶くんに声を掛ける。

「もしかして……」

両手を口に当て、ニヤニヤという効果音がつきそうなほど目を細め、私と梶くんを見比べる。

「おふたりは付き合ってるんですかー?」

『付き合ってません』

「即答!?」

私が否定した刹那、梶くんが大袈裟では?というくらいにツッコミを入れる。

『ただの友人だよ。ね、梶くん』

まあそうだね、とどこか歯切れ悪く返事をする。柚葉ちゃんのように若い子はこういう話題が好きだなぁとつくづく思わされる。とは言っても、私もまだ世間でいう若い子の一員なのだけれど。

「そういえば、ミネって何歳?」

いきなりの呼び捨てと、考えていたこととそう外れていない話題を振られてドキッと胸が高鳴るが、それも一瞬のこと。私はすぐに平然を装う。

『私はまだ26。この店は25の時に始めたの』

seasonはオープンからまだ1年ほどしか経っていない。まだ若い私がどうしてこんな建物持っているか、と誰もが不思議に思うが、意外と単純な理由なのだ。

まだ20の時。
私の命の恩人がたまたま裕福だった為に、将来の夢など特に決めていなかった私にプレゼントしてくれたのだ。

かなりぶっ飛んだ話だけれど、単純な話。

「え!?まだ26!?」

梶くんがショックを受けたように、これまた大袈裟に驚く。

『そんなに老けて見える?』

わざと頬を膨らませてみる。
だって、失礼な話じゃない?私だってまだまだピッチピチの20代なのに!

「いや、そういうんじゃなくて!オーナーをしてるって聞いたからてっきりもっと歳がいってるのかと……。でも、それにしては若く見えるなぁと思って」

彼は素直だ。
変な嘘をつかない。だから、彼を信用してしまってもいいのかな、と思ってしまう時がある。
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