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君の音、僕の音。〜梶裕貴〜

第3章 Episode2 #悪夢


『はあっ、はあ……はあ……』

夢………だったのだろうか。
その割には現実味を帯びていた気がする。
夢とは、その人の体験などから連想されるものが多いという。ならば、私の体験談?でも、全く身に覚えのないことだ。

時計を見てみると、まだ朝方4時。
でも、もう一度眠りにつこう、とは思えなかったから起きることにした。早起きは三文の得という。

『んー……っ!』

ベッドから起き上がり、大きく伸びをする。

今日も1日、いいことがありそうだ。





今日は日曜日のせいか、お客さんが少ない。日曜日の客寄せに何かいいものはないか、と考えるものの何も思いつかないが、いつものこと。だから、今日は従業員を少なめにしてある。もちろん、オーナー兼店長の私に休みなどない。

今日は柚葉ちゃんと2人で店番だ。

カランカラン、と店に取り付けた鈴が軽やかに鳴る。

『いらっしゃいませ』

「どうも」

笑顔を向けた先にいたのは、梶さんだった。私は彼だということに気付き、すぐに営業スマイルを解く。友人となった梶さんに営業スマイル、つまりは胡散臭い笑顔を向けるのは気が引くからだ。

「別に止めなくていいのに。俺は可愛いと思うよ」

それに気付いた梶さんがすかざすそう言う。

『お世辞は受け付けてないので』

少し冷たい言い方になった自信がある。私は容姿を褒められるのは苦手だから。だって、お世辞だということは分かっているし、ただの社交辞令。それに、そういう言葉を掛けてくる人はあまり信用出来ない。別に彼を否定している訳では無い。ただ………

「お世辞じゃないのに……。確かそういうの苦手だっけ?気を悪くさせたのならごめん」

自分で冷たい返事をしておきながら、彼に罪悪感を抱くなどおかしな話だ。

彼と話していると、調子が狂ってしまう。



苦手だ。
こういう彼みたいな人は少し苦手だ。
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