第1章 Episode0 #すべてのはじまり
「店長!本当にごめんなさい!!!」
美玲ちゃんが目に涙をため、頭を下げる。
私は震える美玲ちゃんの肩にそっと手を置いた。
『顔、上げて』
私の言葉に反応して、美玲ちゃんが恐る恐る、といった感じに顔を上げる。
私は、そんな美玲ちゃんを安心させてあげたくて、優しく微笑んだ。
『美玲ちゃん、泣いちゃだめ。笑顔がすっごく可愛い子なんだから、ね?』
年下のこんな可愛い子に責任を負わせたくない。負わせるわけがない。
『美玲ちゃんは悪くないよ。私が気付かなかったのが原因なんだから』
そう。
私がもっとしっかりしていればよかった。
ただ、それだけのこと。
私の責任。
『すぐに買ってくるから、待ってて!』
このお昼が過ぎるまで、なんとかもつ量のバターを私1人で買うのは結構しんどいけど、可愛い子にそんな思いをさせるくらいなら、私1人が負った方がいいに決まってる。
今は冬だから、持って帰る間にバターが溶ける心配もない。
私は店を出て、サラリーマンが行き交う道を走り続けた。