第2章 Episode1 #約束
『ふふっ』
思わず笑みが漏れた。
だって、すごく嬉しいから。
今の私の気持ちは、誰にも分からない。
「っ………」
私の頭が置いてあった位置に座る梶さんから、息を呑む声が聞こえた。私は何かと思い、振り返る。
『どうしたんで────うわっ!』
少し梶さんに体重を預けていたから、急に立ち上がられると体勢を崩すわけで。
私はそのままソファーに倒れ込んだ。
「大人しく寝とけ」
少し口調の変わった彼に、胸が高鳴った。
顔が真っ赤になった私を見た彼が、何かに気づいたかのようにはっとする。
「すみません。なかなか役が抜けきらなくて……」
『い、いえ!いいと思います!!』
彼の言葉を遮って、思わず大声で言ってしまった。そして、恥ずかしさにごにょごにょと口ごもってしまう。
そんな私を見て、梶さんがいたずらっぽく微笑んだ。
「あははっ、ミネさんは俺様系が好きなんだ?」
私は今の言葉に少し違和感を感じた。
だって………
『今………』
私を初めて下の名前で呼んでくれた。そして、初めて砕けた口調で話してくれた。
「あ、ダメでした?」
しまった、とでも言うように口元を抑える彼に、私はにっこりと微笑んだ。
『嫌な訳ないじゃないですか。嬉しいです。裕貴さん』
と、彼同様に下の名前で呼んでみる。
すると、かあっと顔を赤くさせた。私ではなく、梶さんが。
「え、いや、あの………」
これは…………
嫌だ、という反応か。
それとも、ただ照れただけなのか。
『裕貴さん?どうしました?』
悩んだ結果、私は少し賭けに出ることにしました。
『裕貴さん、どうしたの?』
「いや、だから……」
ますます赤くなっていく。
どうやら、私の変なスイッチが入ってしまったようだ。
『ゆうくん、顔真っ赤だよ?』
「あーーー!もう無理っ!」
少しやり過ぎたみたいだ。
その証拠に、彼の顔は耳まで赤くなり、目が少し潤んでいる。
新たな私の目覚め、でしょうか。