第2章 Episode1 #約束
〈ミネ!〉
私を呼ぶ声がした。
続いて、大きな衝撃が背中に与えられる。
キ───────ッ!
タイヤの擦れる嫌な音。
ドンッ!
何かがぶつかり合う音。
周りの悲鳴。
赤く染まった地面。
なんで………
いやだ………いやだいやだいやだ!!!
*
*
*
『ん………』
目を開いた途端に、眩い光がまぶたの間から射し込む。そして、それを遮り、見覚えのある顔が私の顔を覗いた。
「大丈夫ですか?」
この声を、顔を、私は知っている。
『梶さん……?』
少し疑問形になってしまったのは、まだ少しだけその答えに自信が持てなかったから。
「そうですよ」
私を安心させるかのように優しく微笑む。本当に優しくて暖かな笑みだった。
『どうしてここに……?』
少し掠れた声が出た。
そんな私に気づいてか、梶さんが水を私に差し出してくれた。ペットボトルに入ったそれは、まだ冷たい。多分、まだ買ったばかりのものだろう。キャップを開けてから手渡してくれた。
「厨房で倒れたんです。覚えていますか?」
『倒れた………』
確か、パン生地を作っている途中に視界がぐにゃりと傾いて………。
私が今いるのは、seasonのスタッフルームだ。つまり、私が倒れたのを見かけた彼が私をここまで運んでくれた、ということだろうか。
「貴方が倒れそうになったのをギリギリのところで支えて、ここまで運んできました」
私の心が読めるのか、というくらいにピンポンイントで教えてくれた。私の顔が分かりやす過ぎるのだろうか。
「貴方の顔が分かりやすいので」
後述が正解のようです。