第2章 Episode1 #約束
結局、お腹は空腹を訴えるのに何も食べる気にはなれず、厨房へと戻った。
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時刻は夕方の6時。
閉店の時間だ。
私は店の扉にぶら下げているプレートをcloseに変える。そして、店で働いてくれている従業員、みんなにお給料を渡す。なんて言ったって、今日は給料日。きっちり渡さないと。
『それじゃあ、みんなお疲れ様でした』
「お疲れ様でしたー!」
そう言って、帰る準備を終えた人から店をあとにする。
私はひとり残り、明日の準備。
パンの生地を作っていると、何とも言えない倦怠感が襲ってきた。
『はあ……はあっ、はあ……っ』
息が荒くなっていくのが自分でもわかる。なんだか、視界もぼやけてきた。
『うっ………』
私はぐにゃりと世界が歪んでいったのを最後に、意識を手放した。
「危ないっ!!」
そう、声が聞こえた気がした。