第1章 Episode0 #すべてのはじまり
彼の無は、かなり怖い。
今までずっと、にこにこしていたからこその彼と出会って初めての恐怖だ。
『あ、あの………』
この場の重たい雰囲気に耐えかねた私は、先のことなど考えずに声を掛けていた。
「あ、あはは……。………最悪だ」
声も顔も!
笑ってない!
ものすごく暗い顔だ。
これは、どうしたんですか、と聞くべきか否か。
私がこうして迷っている間にも、彼は空虚な笑い声を上げ続ける。ええ、そりゃあもう……
めちゃくちゃ怖い!
『あ、あああ、あの!』
かなり声が震えてしまった。
そんな喉の調子を整えようと、軽く咳払いをする。
『んんっ……!えっと……かなり落ち込んでいるように見えますが……どうかされましたか?』
私の言葉に、彼はまた空虚な笑い声を上げた。
「あはは……分かっちゃいます?」
ええ、そりゃあもうめちゃくちゃ伝わってきますね!
という言葉を飲み込み、目で続きを促す。
「マネージャーがどう、とか言うわけじゃないんです。ただ…………」