第1章 Episode0 #すべてのはじまり
私はしばらく経ってから病室に戻った。
ロビーのソファーに座っていたら、見回りの看護師さんに変な目で見られたから。
がらっ、と病室の扉を開ける。
梶さんが眠っているのを確認して、安心する。
さっきはそこまで気にしなかったけど、病室内はすごく静かだ。聞こえるのは、梶さんの規則正しい寝息の音だけ。
その音を子守唄にするかのように、私はすとん、と眠りに落ちた。
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眩しい光が窓から射す。
その眩しさに目を細め、無理矢理に目をこじ開ける。
「あ、おはようございます」
彼のベッドに突っ伏していた頭を上げた瞬間に、梶さんの顔が私の顔を覗きこむ。
『え!?……あ、おはようございます……』
誰かと朝のあいさつを交わしたのはいつぶりだろうか。とても、懐かしい感じがする。
そんな心地よい気分で、起きたばかりの頭をぼーっとさせる。朝は頭が働かないのだ。つまりは、低血圧。
「俺、パジャマから着替えたいので、一度カーテンの外に出てもらってもいいですか?」
そういえば、梶さんはまだ病院服のままだ。
私はぼーっとする頭を無理矢理起こし、ベッドの周辺に巻かれるカーテンの外に出た。