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君の音、僕の音。〜梶裕貴〜

第1章 Episode0 #すべてのはじまり


ふと、窓の外の景色から梶さんへと視線が移る。青白い月光に照らされた彼の顔は、とても病弱そうに見えた。そして、その顔を私は、綺麗だ、と思った。

………いやいやいや。
何考えてるの。
病人の顔見て、綺麗、とか私の頭大丈夫??

情けなくて恥ずかしい気持ちが私の心に流れ込んでくる。私はその感情を打ち消すかのように、彼から視線を外した。

でも、なぜかまた無性に彼の顔を見たくなって、そっと梶さんを盗み見た。

『綺麗………』

思わず発した自分の言葉に、顔がかあっと熱くなる。大丈夫、誰も聞いてない。そう自分に言い聞かせる。

一度言葉に出してしまうと、人はかなり大胆になるらしい。

私は躊躇いもなく彼の頬に自分の手を添えた。少し熱い彼の頬が、窓から少し漏れる冷気で冷たくなった私の手をじわりと温めてくれる。

「ん………」

彼の少し苦しそうな声が聞こえ、私はそこで我に返る。ばっと手を引き、私は焦って部屋を出た。

なぜ衝動的に部屋から飛び出たのか。
わからない。
わからないけど、自分の行動があまりにも恥ずかしすぎた。

冬の冷たい廊下で顔に上った熱を下げる。

『何やってんだ………』
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