第16章 いつか。絶対。
「蜂名。今日は風呂が休みだそうだ。鼠が入り込んだらしい。」
「あ?水道管に入り込む鼠がいるのか?それともボイラー室か?馬鹿な事言ってんじゃねぇよ。使えなくなる訳がねぇ。」
「まぁ、使えなくはないな。今は使う必要が無いだけだ。」
「はぁ?お前、三島だったな。くだらねぇ事に労力使いやがって。馬鹿だな。馬鹿。脳ミソ腐ってんじゃねぇの?あはは、ぶっ。」
ぐわん。と揺れたのは俺の脳みそ。
揺れる脳に抵抗むなしく、三島に羽交い絞めされ、誰の部屋だろうか、引きずり込まれた。
「若気の至りで老後の笑い話にしようと思うんだ。」
「三島?蜂名、どうしたんだ?」
「前山さん、この間言ってたでしょう?」
「なにを?」
この言葉を聞いた時。
俺は一生この事を、キズとして背負って行くのだろうと思った。
「そろそろ女とヤりたいなぁ。」
揺れる脳みそでハッキリ聞こえた言葉。
ようやく頭を左右に振って意識がはっきりした時には、俺はあられもない姿で洋式の寝床、ベッドに括りつけられていた。
両の腕はバンザイさせられ、左右の頭の柱に括りつけられていた。
両の足はベッドの中間ほどの足だろうか、そこにぎっりち縛りつけられていた。
動けるはずもなかった。
相手は一緒に訓練を積んで来た、候補生。
そこらに居るやわな男じゃない。
やめろ!と叫ぼうと思った瞬間。分厚い布を噛ませられ、苦しくなり、息をするので精一杯。
目も隠され、真っ暗。
クソ!と何度も悪態をつくが、うあ!うあ!と大した大きい声にならない。
助けなど。
いや、助けに入られた方が困るか。
困りゃせんが、一生の恥だろうが。
俺はこの時思ったんだ。
殺される事はないだろう、黙っておけば、終わる。と。