第24章 キサラリの使い方
「そのジジイ、パントマイムというのをしたんだよ」
ぱんとまいむ? と首を捻るもんだから、俺はその場でぱんとまいむをやる羽目になった。
「お上手ですね!」
「まぁな。この間の客が外国から来たやつでよ、日本語がわからねぇからって動きで表現したんだよ、俺も思わず教えてもらってちまった」
で、だよ。
そいつ、あぁ、ジジイのほうね
座ったんだよ、キサラリに!
「知らねぇってのは恐ろしいなまったく。でもそれが妙に様になってたってぇ話だから、知らねぇってのもたまにはすごいもんだ」
「ですね。私たちも知らない同士の人間ですが、どこかでつながっているかもしれませんし」
「あぁ。だから、余計に他人同士でいたほうがいい」
ほんと。なんか、胸毛生えてきそうだから。
「面白い話、ありがとうございました」
「や、こちらこそ。いい暇つぶしになったよ」
「そうです、一つことばを」
ことば? と首を捻るとシラッキカムイをちらりと見せてきた。
「あぁ、みなまで言わなくていい。それで?」
「ネコに何か、運? 腐れ縁? のようなものを感じます。でも悪いものじゃない、良いものでもない気がします」
「じゃあ気にしねぇよ」
「愛されている」
「そうかい」
女とはそれで別れた。
じゃあ、俺からも一つ。もう女とは別れて一人だから、小声で。
「ラッコには気をつけろ」
(なんでしょう、胸毛とラッコという言葉が急に頭に)
(ネコ、ネコ……う~ん? 百之助? ちがうか)
でも、不思議だなぁ
((ク・セマシテク))
※チンチリ……アイヌ模様の服
シラッキカムイ……占いに使うキツネの頭骨