第5章 小さな恋の物語
「アラン様よ!」
「アラン様、私と踊ってくださいませ。」
やっと見つけたドアの近くで、女性達のそんな声が聞こえてきた。
なんとなく振り返れば、すぐ近くにアラン様がいらっしゃる。
トクントクン
心臓が飛び跳ねてるみたいに強く鼓動をはじめた。
「アラン様私と…」
「いえ私と…」
きっと身分も確かなお嬢様達なんだろうな…
アラン様人気者なんだ…そりゃそうだよね…あんなに素敵な方なんだもん…
帰ろう…
プリンセス、レオ様、ごめんなさい。
やっぱり私の居る場所ではありません。
レオ様はきっととっても忙しい中、私のダンスの為に時間を割いてくださっていたんだと思うと、胸が痛い。
アラン様と、まわりにいるたくさんの綺麗な女性から目を逸らしてドアに向かった。
ドアの前の番の方に、開けて欲しいと言おうとした時、腕をぐっと掴まれた。
反動で振り返れば、目を丸くしたアラン様がいらして…
「?お前なんでここに…」
と、かなり驚いてるご様子で…
「ちょっとこっち来い!」
そのまま腕を掴まれて、中庭まで引っ張られてしまった。
腕を掴む力はかなり強い。
「い、痛っ…」
「悪い…」
パッと離されて、アラン様との少し距離が空いてしまう。
何を話せばいいかわからないけれど…こうやってまた近くにアラン様がいるのが嬉しくて仕方ない。
「プリンセスに招待状をいただきました。」
せっかくお会い出来たのだから、せめて明るくと…笑顔を向けてみる。
「レオ様もお店にいらっしゃいました。」
レオ様のご注文のお品が、プリンセスの為の物だと思うと、本当に嬉しい。
「顔…にやけてるぜ?レオに惚れたか?」
アラン様の呆れた声が聞こえる。
「ち、違います!レオ様にはオーダーをいただけて…それがプリンセスの為だったのが嬉しくて…」
顔をブンブンと振りながらそう言えば、
「そっか…レオも行ってたのか…。っつーか…じゃあそのドレスはレオからか?」
少し怖いお顔になったアラン様は、じっと私を見下ろした。