第4章 紅い瞳の魔法使い
レオ様はお忙しい方らしくて、お店に滞在する時間は1時間程だったけれど、練習をする為に通ってくださった。
パーティーまであと二日。
そんな日の夕暮れ時に、レオ様がご来店された。
「ちょっと忙しくなっちゃって遅くなっちゃった。」
いつもより遅くにいらしたせいか、少しお疲れのご様子で…
「ごめん。またすぐに戻らなきゃならないんだけど、これを…」
レオ様は大きな箱を一つ置くと、
「パーティーにはこれを着てね。プリンセスが一生懸命選んでたから、やっぱり行けないとか言わないでね。」
と、日が近くなるにつれて怖じ気づいていた私の心を見透かすように笑った。
「明日は来れないけど、ちゃんはもう踊れるから自信持っていいよ。」
と、ウィンクをするレオ様に、そんな自信があるものですか!と抗議したくなるのを抑えて、オーダーしていただいたお品が完成した事をお伝えする。
大切な方へとうかがったから、レオ様のそのお気持ちを代わりに込めて…大切に作り上げたもの。
「どうでしょうか…。」
今私に出来る最善は尽くしたはず…レオ様が気に入ってくださるといいな…。
「うん。凄くいい。ありがとう。」
お品を見つめる紅い瞳は、大切な方への想いが溢れていて、ああ…レオ様に愛されているその方は、きっと幸せだろうな…そんな風に思えた。
アラン様と同じ紅い瞳のレオ様。
ここ数日で、ダンスのみならず、お辞儀の仕方も教えていただいた。
「レオ様。ありがとうございました。お疲れのご様子ですが大丈夫ですか?」
「大丈夫。俺もありがとうちゃん。パーティー楽しんで。」
プリンセスにも感謝をお伝えしたい、と言うと、伝えるよ、と蕩けそうな優しい微笑みが返って来る。
アラン様にするような、ドキドキと苦しい胸の高鳴りは無いけれど…レオ様のこの微笑みは、どこか幸せな気分になれる魔法のよう。
お店の外までお見送りをして、CLOSE の看板を出した。