第4章 紅い瞳の魔法使い
次の日、空は雲ひとつない快晴で…雲がもくもくと出てる私の心とは正反対だった。
カランカラン
開店してすぐにお店のドアが開く。
「いらっしゃいませ」
余計なことを考えずに仕事をしなくちゃ…と、笑顔でお店のドアを開けてくださったお客様を見る。
「こんにちは。君がちゃんかな。」
綺麗な薄い銀色に近いブロンドの髪に紅い瞳の男性は、私の名前を呼んだ。
「あの…どこかで?」
初めて会った気がしない。
でも見当もつかなくて…
「いや、きっとはじめましてだよ。」
にこり、と笑うこの男性は…誰かに似ているような…。
「今日はちゃんにオーダーしたい物と…あとは…貰ったかな?招待状。」
「招待状?あ…プリンセスの!いただきました…」
「プリンセスから、君の先生をするように言われてるんだ。あ、まずはオーダーからいいかな?」
レオ様とおっしゃるこの不思議な方がオーダーされたのは、私もまだ作ったことのないものだった。
直径5ミリはある大きなダイヤモンドを埋め込んだ革細工のお花のモチーフを作って欲しいと言われて…指輪に出来るくらいの小さな物で…とのこと。
レオ様はいったい何者なのかしら…
いろんなことが頭の中を駆け巡るけれど、オーダーをしていただけた事が何よりも嬉しい。
お花モチーフのコサージュをお見せして、デザインを考えていく。
サンプルを明後日にお見せすることに決まると、
「じゃあ…次は、先生になる番かな。」
と、優しく微笑まれてしまった。
「あの…何の先生を?」
プリンセスからとおっしゃってたけれど…
「ダンスのだよ。舞踏会で君は踊るんだ。」
ええっ!?
あまりの驚きに、目をパチクリさせていれば、
「大丈夫。その為の先生だよ。」
と言うレオ様は脳内がクラクラしそうな笑顔だった。
でも…アラン様にお会いできる機会だもの…舞踏会なんて、私には場違いだけれど…プリンセスがわざわざダンスの先生をお願いしてくださったんだから、頑張らなくては!
「よろしくお願いします。」
決意をして、レオ様に感謝の気持ちを込めてお辞儀をする。
「うん。じゃあ…まず、ステップからやろうかな。固くならなくて大丈夫だよ。」