第3章 夢ならまだ覚めないで
抱きしめらたまま、そっとアラン様を下から覗き見れば、ん?とすぐ気がつかれてしまった。
「なんだよ?もう一度するか?」
と、楽しげに笑うアラン様は、なんだかお疲れのようにも見える。
「そ、そうじゃなくて!」
「違うのかよ」
笑うアラン様も素敵だな…なんて見とれてしまう。
そうじゃなくって…
「アラン様、お疲れではないですか?」
思わず手を伸ばして、頬に触れてしまった。
すると、アラン様はこれまでにないくらい優しい微笑みで…
「疲れてねえよ。…ただ、ちょっと立て込んでて…悪いな。気を使わせた。」
そう言い終えると、額にチュッと音を立ててキスをされた。
そっか…
アラン様は騎士様だから、きっと街中の喧騒にも気を立てていなくてはならないのかな…
疲れてないっておっしゃってるけど、きっと…そうだ!
「あの!もしよければ、お食事はうちでいかがですか?それならばあまり気を張らなくて大丈夫でしょうし…」
言い終えてから恥ずかしくなった。
アラン様にこんな庶民のお食事をだなんて…私はなんて間抜けなの!
「すみませんっ!こんな…あのっうちにだなんて…」
慌てて撤回しようと思ったけれど…
「お前がいいなら…俺は嬉しいよ。っつーか…ま、いいや。」
なんて言われてしまって、後に引けなくなってしまった。
でも、アラン様が少しでも気楽に過ごしてくださればそれでいい…だから、くつろいでいただけるように頑張らなければ。
お店の二階が、私の家。
正確にはおじいちゃんの家だけれど、今は私が自由にさせてもらってる。
ソファにご案内して、濃いめのアッサムティーをお出しした。
「ご用意しますので、ゆっくりなさってくださいね。」
いつもの空間に、アラン様がいらっしゃるのが、嬉しくて恥ずかしくてくすぐったい。
そそくさとキッチンに引っ込んで、料理をはじめた。
どうしよう。
お口に合うかわからないけれど…お誘いしてしまったのは私なんだから、来なきゃよかっただなんて思われないようにしなくちゃ。
ちょうど、今朝方に市場に出かけてお野菜を買っておいた。
アラン様に食べていただける喜びと緊張と…なんだかいろんな感情がまざってしまいながらお料理をする。
どうかお口に合いますように。