第3章 夢ならまだ覚めないで
お二人をお店の外までお見送りをする。
遠ざかるお二人の背中を、お店の周りを掃除をするふりをして見つめてしまった。
背の高いアラン様の横に、ヒールを履いてちょうどいい高さのプリンセス。
なんて綺麗な後ろ姿なんだろう。
ふんわりとした笑顔が素敵なプリンセス。
遠ざかるお二人の姿は、まるで私とアラン様の身分の遠さを見ているみたいだった。
カランカラン
日の落ちた頃、お店のドアが開いた。
「待たせたな。」
少し息を切らせたアラン様の姿にも、ドキドキと鼓動は速くなる。
どんなお姿も素敵だな…なんてぼーっと見つめてしまった。
「?俺の顔になんか付いてるか?」
はっと我に返れば、見つめてしまっていたことが恥ずかしくて仕方ない。
「いえっ。付いてませんっ!」
両手をぶんぶんと振って慌てる私を、楽しそうに笑ってる。
笑ってるお顔も声も…素敵だなぁ…なんて、私はきっとアラン様病なんだと思う。
「じゃあ…」
再びぽーっと見つめていた私のすぐ目の前まで、アラン様はいつの間にか近づいていて…私の頬に温かくて大きな右手が触れる。
「あんまり見てると…」
お顔がどんどん近づいて来て、アラン様の唇がそっと私の唇に触れた。
え?
金縛りにあったみたいに動けない。
「目…閉じろ…」
唇を離したばかりの近い距離の紅い綺麗な瞳に、まん丸く目を見開いた間抜けな私が映ってる。
足のつま先から熱が上がってくるみたい。
恥ずかしくて、ぎゅうっと目を閉じれば、
「ははは。固まりすぎ。」
と、笑う声がして、再び唇が触れた。
触れるだけのキスは、角度を変えてもう一度…そしてついばまれるように…唇を包まれているみたいなキス。
なんだか頭がくらくらして、触れている唇が気持ちよくて、気がつけばアラン様の腰の辺りのお洋服をぎゅうぎゅうと掴んでしまっていた。
唇が離れると、アラン様のたくましい腕は私を抱きしめて…ふぅ…と、小さく吐き出す息が聞こえる。