第3章 夢ならまだ覚めないで
お預かりしていた鞄の仕上がりをアラン様に確認していただいて、防水加工を施す間はティースペースでお待ちいただく。
プリンセスのペンケースは、直ぐに修理出来るもので、お時間をいただいて、一緒にお待ちいただいた。
「わあ!このお茶すごく美味しい!」
アラン様にはアールグレイを濃いめに、プリンセスには蜂蜜を入れて甘くしたミルクティーを。
「…最近ふさぎ込んでたから、元気になったみたいでよかったよ。連れて来たかいはあったな。」
「ありがとうアラン。おかげ様でもう少し頑張れそう。」
聞き耳をたててたわけではないけれど…お二人のそんな会話が聞こえて、胸の奥がなんだか苦しくなった。
そうだよね…騎士様だもの。
プリンセスの騎士様だもの…
わかっているはずなのに。
アラン様が、いつもとは別人のように見える。
ああいけない…集中しなくちゃ。
作業をもくもくと続けて、なるべくお二人を視界に入れないようにする。
「相変わらず丁寧だな。」
その声にはっと顔をあげれば、優しく微笑むアラン様と目が合った。
「ありがとうございます。もう少しで出来上がりますので…」
目が合ってしまっただけで、耳まで熱い。
思わず視線を逸らして俯いてしまった。
「あいつを城まで送らなきゃならねえから少し遅くなるが…今夜空いてるか?」
俯いている私の耳元で、アラン様は囁くように言う。
再び、ぱっと目の前のアラン様を見れば、今度は少しにやりとした笑みを浮かべてる。
「飯にでも行こうぜ。」
「よ、喜んで。」
顔から煙が出ちゃうんじゃないかなっていうくらい、頬を触れば熱かった。
真っ赤だぜ?なんて笑うアラン様に、ドキドキする心音は止まらない。
プリンセスの前で大丈夫なのかな?なんて、心配になって、視線をプリンセスに向ければ…
温かくてふんわりとした微笑みを向けてくださっていた。
アラン様とプリンセスからお預かりしていたお品の修理と仕上げを終えて、お渡しする。
プリンセスがとても喜んでくださって、心がぽかぽかと温められたようだった。
「あの、さん…また来てもいい?」
プリンセスは店内の商品をくまなく見てくださって、お茶も含めてとても気に入ってくださった。